BookReview:『花埋み』

第二弾は、渡辺淳一の『花埋み』。医療系の小説にハマっていた時に読んだ本。とても興味深い教訓が多くある。そして読みやすい。

 

【おすすめコメント】

結構、暗い。でも深い感動がある。

明治時代、学問を為す女は恥という「慣習」の中、女性初の医師が誕生した。当時、社会的地位が最上であった医師となり、その職に留まらず、社会運動も活発に行なったスーパーウーマン、荻野吟子の物語だ。当時の政界医療分野のトップでさえ、>「慣例は法ではないが法に近い」と話すほど「女性は、生涯家業を為す」慣習が蔓延していた。その「慣習」に独りで立ち向かい、打破していく物語なのだが、壁は果てしなく高い。また、当然女性であり、また吟子は育ちの良いお嬢であった影響もあり心の動きが複雑である。その心理描写を追いながら苦悩の戦いを楽しめる!

 

 

【感想レポート】

明治時代、男高女低の世であり学問をする女は恥と言われていた。そんな時代に西洋医術を志すものにして初めての女医が誕生した。当時、女性が医術を為すことはおろか、読書をするだけでも恥であるという「慣習」があり、「女性は、生涯家業を為す」という慣例があった。その慣習に立ち向かい、打破したのが主人公荻野吟子である。この女性であるが故に、様々な権利が規制されるのは明らかに不合理であるが当時はこの慣例の恐ろしさは甚だしく吟子の壮絶な苦行が見るに耐えない部分もあった。

しかし、この「慣習」と「不合理」の関係はとても複雑であり今でも多くの話題がある。同性愛などに代表されるジェンダー問題である。ここにも「慣習」の壁があり社会に受け入れられておらず、多くの人が苦しんでいる。ただ、このような問題は、必ずしも不合理とは言えない面が確かにある。だから、既に「法」「契約」も関わってきている。つまり、明治の男高女卑よりも、高い壁ということになる。私の意見を述べると、ここには明治のような「革命」的な余地は見当たらないと思う。既に法が存在するし、歴史が長過ぎる、根強い慣習が蔓延っている。小さな積み重ねしかない。この問題に関して、この本は考えさせてくれた。これもとても有意義だったと思う。